「ええ。そうよ……私だって、貴族の義務は果たすつもりだったわ。けれど、ジュストと結婚出来るのなら、そうしたいの。出来れば、貴女にも私たちのことを応援してもらいたいわ……私のたった一人の妹だもの」

「お姉さま……」

「……ミシェルお嬢様。オレリーお嬢様。お取込みのところ申し訳ございません」

 ちょうどその時、開けたままにしていた私の部屋の扉を、遠慮がちに私付きのメイドサリーが叩いたので私は苦笑して言った。

「……良いわ。サリー、何かしら?」

 急ぎの用があるのに、私たちが話していたからなかなか伝えられずに機会を窺っていたのだろう。

「はい。ラザール様がミシェル様に会いたいと、いらっしゃっております。今は応接室の方へお通ししておりますが」

 本来ならば、貴族の訪問は先触れがあるはずだけど、この前に会ったラザール様は、ジュストのことで婚約者の私へ色々と不満があるようだし、そういう『気に入らない』といった気持ちを行動で表明しているのかもしれない。

 なんなのかしら……私だって不満があるのは、同じことなのに。