「あ。あの本何処に行ったかしら。ジュスト知らない? ……ジュ」

 私は自室でお気に入りの本がないことに気が付き、いつも傍に居てくれた彼の名前を呼ぼうとして、そう言えばもうサラクラン伯爵邸に彼は居なかったと思い直した。

 邸の主であるお父様の意向に逆らって、この邸に居るなんて無理なことはわかっている。それは理解していたとしても寂しかった。

 いつも一緒に居てくれたというのに、もう私の傍に居ないんだと、落ち込んでしまう。ただそこに居るだけだと言うのに、支えてくれた彼の大事さに気がついた。

 彼なしでは居られないくらいに、私はジュストのことが、とても好きなのだ。

 居なくなってしまったことで、その想いはより強まったと思う。

 ジュストがこのまま居なくなってしまうなんて、絶対に嫌。どうにかして、連絡を取らなければ。

 ……とは言っても、サラクラン伯爵邸の使用人たちも妹オレリーも、一度家出をしてしまった私を完全に見張っている状態。