到着した場所から逃げるように駆け出し考えごとを歩いていたら、村の中心部から民家の方へ迷い込んてしまったことに気が付いて慌てた。

 ここって、一体……何処なの?

 見回せば田舎らしい人っ子一人見えない同じような風景が広がっていて、さっき到着した賑わっている場所からはだいぶ離れてしまっていた。

 ……だって、私はこの村に住むにしても、家を探したり、宿屋に何日か滞在する予定だった。

 いけない。さっきの場所まで、戻らないと!

「あの、お嬢さん! どうかしたんですか?」

 どう戻るべきかときょろきょろして周囲を確認していた私に、声を掛けてきてくれた若い男性の村人を見て、私はほっとして息をついた。

 だって、彼は見るからに柔和な顔つきで優しそうな男性で、感じ良くにこにこと微笑んでいた。

 良かった。彼に聞けば、迷ってしまったにしても、なんとかなりそうだわ。

「……あ。私。実は、この村、初めて来たんです。どうやら、迷ってしまったようで」

 良い年齢をした迷子であることを恥ずかしくなりつつ私が言えば、彼はそういうことですかと言わんばかりににっこり笑って言ってくれた。

「ああ。そうなんですね。良かったら、僕が案内しましょう。行き先を教えてください」

「宿屋へ行きたいんです」

「そうなんですか。もしかして、こちらへは旅行で?」