「……そっ、それには及びません……スデニカイケツシマシタノデ」

 迫りくる彼の圧力に負け思わずカタコトになってしまった私へ、ラザール様は不機嫌そうな視線を向けた。

 ……ここでは、こうするしかない。こうするしかないけど! 怖いよー!! ジュスト、助けてー!!

 いつもはこんな事になる前に、すぐにそれとなく理由をつけて私を助けてくれたジュストは居ない。

 傍に居ることが当たり前だった彼が居なくなったらこんなにも喪失感を覚えるだなんて、思っても居なかった。

「……ふーん。それは、婚約者の僕にも、話せない事なのか?」

 ……やっぱり、ラザール様、何か勘づいてる? 気が付いてる?

 ……というか、もしかして、全部知っている? 知っているけど、試している? ……私がジュストと結婚したいと、思っていることを。

 誤魔化すように曖昧に微笑んだ私は背中にたらりと冷や汗が流れて、不審げな視線を向けられていることに気が付き慌てて私は言った。

「これはお忙しいラザール様のお手を煩わせるほどのことでは、ありません!」