「ふーん……僕が君を訪ねる時も僕の邸へとやって来る時も、いつも必ず彼が居たようだから、サラクラン伯爵家の護衛騎士には休みがないのかと思い込んでいたよ。居ないんだね。珍しい」

 休みであるというのは嘘だとわかりつつこう言っているのだから、彼の性格がどうなのかわかってしまうというものだ。

「え……ええ」

 ……何なの。この嫌味っぽい言い方……婚約者ラザール様のこと、私はそんなに嫌ではなかったはずなのに、今ではなんだかやることなすこと、キザっぽくて無理だと思うようになってしまった。

 いいえ。この事自体は、ラザール様は悪くないのよ。

 前は婚約者だから、私はラザール様のことを好きになろうと努力していた節があった。結婚するならそうするべきだと思うし、彼だってそうしてくれていたはず。

 けれど今は、ジュストのことを好きだと自覚し、彼に伝えて受け入れて貰えたから、今ここでラザール様のことを無理だと思ってしまっても、それは仕方ないと思う。

 だって……別に私が彼のことを、嫌がった訳ではないのよ。先にラザール様の方が私ではなく、妹オレリーが良いと言ったの。