「やっぱり! やっぱり……そうだったのね」

 私はナディーヌお母様の意味ありげな笑みを見た時に『もしかしたら、そうなのかもしれない』と、ピンと思いついた通りの文章が、二年前の貴族新聞には書いてあった。

『ドレイク・リュシオールをリュシオール男爵に叙す 各種難病の治療方法解明に尽力し、医療分野で我が国に多大な貢献をしたため』

 ジュストのお父様、すごいわ。叙爵してすぐに領地まで、与えられている。よほど、陛下がこれを喜ばれたのを見て取ることが出来る……彼に歳の離れた弟が生まれない限りは、ジュストはリュシオール男爵も受け継ぐことになるのだろう。

 ……これも、ジュストが仕掛けたという事? 嘘でしょう。私と結婚するために?

「……何がやっぱり、なんだ?」

「キャッ……」

 いきなり背後から聞こえた声に、私は背後を振り返って驚いた。だって、本来ならそこに居るべき人ではない人が居たから、幽霊でも見たかのように思わず短い悲鳴まであげてしまった。

 ……ああ。いけない……とてもプライドの高い彼はこれをした私に、きっと気分を害してしまうはず。

「家出から無事に、ご帰還されたと聞いて、婚約者に会いに来たら、ここに居ると聞いた……もしかして、邪魔だったかな?」

 彼の回りくどいその言いようは、私はあまり好きではない。とは言え、多分これを同じことをジュストがしても許せてしまうから、私は単にラザール様よりもジュストのことが好きなのだ。