一時的な恋愛感情に流されてしまい、不幸になった人たちは多いからだ。

「オレリー。もういい加減にしなさい。ミシェルは家出から帰って来たばかりで、考えることが、たくさんあるんだから」

 母はこの妹がそれを言うことが、私にとっていかに辛いかを理解しているらしく、オレリーを嗜めた。

「だって! この前だって、親に決められた婚約を嫌がって駆け落ちした貴族二人が、お決まりのように不幸になったではないですか! 私は大好きなお姉様が、そんなことになるなんて……」

「オレリー。貴女は興奮し過ぎているようだわ。自分の部屋に戻りなさい」

「お母様……けど」

「良いから。戻りなさい」

 いつもは体の弱い彼女に甘いけれど、ここはピシャリと言った母に逆らえず、オレリーは渋々ながら部屋を出て行った。

「……お母様。ごめんなさい」

「何も謝ることはないわ。貴女も言いたいことを言えず、辛いと思うけど……オレリーには、あの事は知らせない方が良いわ。わかっているでしょう」

 ラザール様が私からオレリーへ、婚約者を変更出来ないかと聞いたあの件だ。

「わかっています……あの子が、何も悪くないことも」