私たち二人は結婚したいと聞いて怒り狂った私の父サラクラン伯爵の言葉に頷き、ジュストは逆らう事もせずに大人しくスッと立ち上がった。

 ……え? 何。どうしたの?

「サラクラン伯爵。これまで受けたご恩、僕は決して忘れません。ミシェルお嬢様、愛しています。それでは、ここで失礼いたします」

 そこでわずかな逡巡も見せることなく彼は一礼して、呆然としている私に向けてにっこり笑うと部屋から去っていく。

「ジュスト、ジュスト……!? え! どこに行くの!?」

 私の必死の呼び掛けに振り返り微笑んで、ジュストは軽く片手を振って……扉からすんなりと出て行った。

 え?! お父様が怒ったとしても僕がどうにかするって、何回も言ったのに!

 何があっても私から離れないって、そう言っていたでしょう!

「ミシェル。ジュストを追いかけることは許さない。とにかく、お前はそこへ座りなさい」

 予想外過ぎる展開に、彼を追いかけようと続いて立ち上がろうとした私は、お父様の言葉に動きを止めた。サラクラン伯爵はお父様で、ここで逆らっても閉じ込められるだけだ。