真剣な表情のジュストを見て、私は若干ムッとしてしまった。だって、彼を受け入れたこの状況で、キスが嫌だなんて誰が言うと思うの?

「……それも、貴方の得意の意地悪なの? ジュスト」

 護衛騎士ジュストはいつも、物知らずな私のことを揶揄って遊ぶ。これもその一環なのかと警戒したら、彼は首を横に振って苦笑して言った。

「いえ。それをしてしまうと、今まで培った鋼の自制心がなくなり、もう止まれなくなるかもしれないので、ここはお嬢様ご本人にちゃんと許可を得た方が良いかと思いまして」

 ……止まれなくなる……? どうして。ジュストが止まる必要なんて、あるの?

「……別に構わないわ。だって、私たち、もうすぐ結婚するんでしょう?」

 私がそう言って頷けば、ジュストは楽しそうに微笑んだ。

「ええ。その通りです。ですので、うん。何の問題もありませんね」

 背の高い彼は背を屈めて私の顎を持ち上げて、目を合わせてじっと動かなかった。

「……ジュスト?」

 ……どうして、私にキスをしないの?

 いくら待っていても、なかなか近づいて来ない彼に焦れて私が呼べば、ジュストは苦笑して言った。