「……泣いているお嬢様を、僕がこうして抱きしめるのは、なんだか久しぶりですね」

 ジュストは幼い頃から私付きの護衛騎士だったし、悲しいことがあって泣いている私を慰めるのは、いつも彼の役目だった。

 ラザール様が私の婚約者に決まって、思春期に入る頃にはこれは男女ではあんまり適切な行為ではないと知って、そうしないように気を付けていた。

 けど、こうして彼に久しぶりに抱きしめられて、とても良くわかった。

 私はこれをずっと望んでいて、けどそれはいけないと自分の中で禁じていて、無意識に求めてやまないくらいにすごく寂しかったんだって。

「私……本当に、ジュストと結婚出来るの……?」

 私が彼を見上げたら、いつものように楽しそうな表情で微笑んだ。

「出来ますよ。この後は僕がどうにかしますので、お嬢様は何も心配しなくても、大丈夫です」

「……嘘みたい。嬉しい……」

 嬉し涙をこぼした私の頬に親指を当てたジュストは、そのまま顎を持って私の唇を撫でた。

「……あの、無事に想いが通じ合ったところで、キスをしても良いですか。ミシェルお嬢様」