「サラクラン伯爵は一時的には怒るかもしれませんが、愛するミシェルお嬢様が幸せであれば、きっと許してくださいます。それに、保険を掛けるようで申し訳ありませんが、運悪くわかっていただけなくても最終的には孫の顔を見ていただければ、それは解決するはずです」

 ジュストはすべて僕の計算通りです、みたいな澄まし顔をしている。いつものことなんだけど。

 私がここで頷くことだって、彼にとっては予想することは簡単なことだったはずだ。

「私……本当にラザール様との婚約を解消して……ジュストと、結婚することが出来るの?」

 そう出来るなら、そうしたい。だって、今までにこれが出来るなんて、思ってもいなかったから。

 身分違いの恋を自覚した今、もし叶う道があるのならば、私は迷わない。

「はい。出来ますよ。お嬢様が、そう望まれるのであれば」

 ジュストは両腕を軽く開き、にっこりと微笑んだ。

 長年一緒に居た彼には、何もかも全てお見通しなのだ。私がここで、何を望んでいるのかを。

「ジュストっ……!」

 涙ぐんだ私が小走りで抱きつけば、ジュストは抱きしめて、背中をぽんぽんと叩いた。