こうして、私たちの間にある障害が何もかも取り払われたとして……落ち着いて考えてみると、私……ジュストのことが、好き。

 身分違いだと思っていたから、知らない振りをしていたけど……私は彼のことが、好きだった。ずっと。

 けど、ジュストに恋しても絶対にそれは叶わないって、思っていた。だから、好きではないと、これまで自分の心を誤魔化していた。

 身分の差、定められた婚約者、貴族として課された義務。

 私がここで頷いたなら、この恋がもし、叶うとしたら……私は、頷きたい。

 うん。そうよ。

 何度か深呼吸をして覚悟を決めて、ジュストが待つ後ろへ振り向いた。

「……お父様は……怒らないかしら?」

 薄暗い光が差し込み埃舞う室内で、ジュストはいつも通り、飄々とした態度を崩さない。

 護衛騎士ジュスト・リュシオール。十年ほど私の一番近くに居て、ずっと守っていてくれた人。