だから、私はあのラザールと結婚しなくて良かったし、巨額の富を持つ伯爵ジュストと結婚することになり、意図せずに皆から羨ましいと思われる存在になってしまっていた。

 私は別に羨ましく思われたくて、ジュストと結婚しようと思った訳でもないんだけど……。

「……ミシェル。疲れました? 囲まれていましたね」

 久しぶりの夜会に疲れてバルコニーで冷たい風を受けていた私は、知り合いの紳士たちに挨拶をしていたはずのジュストの声が聞こえたので背後を振り向いた。

 夜会に来た貴族たちはひとしきり踊ったら、男女に別れて歓談したり喫煙したりして社交場で過ごす。人好きのするジュストのことは、全く心配していなかったけど、私の予想通り、抜け目のない彼はどこでもやっていけそう。

「……皆、私に何があったか知りたがるの。けど、ラザールの隠し子を知って私が家出をしたと聞けば、私もそうするって言ってくれたわ。前にジュストは貴族では当たり前って言っていたけど、結婚前に隠し子なんて、やっぱりとんでもない話よ」

「そうですか。皆様、世間知らずのご令嬢ばかりで、本当にお可愛らしいですね」