国王陛下もラザールへ冷たくそう言い放ち、王妃様の後を追って席を立った。

 国王陛下の『覚えておくよ』というのは、『二度目はない』という言い換えにもなる。だから、真っ青な顔をしたラザールは、ガタガタと身体中震えていた。

 王族に目を付けられてしまったものね。妙な嘘をつかなければ、それでよかったのに。

「……あら。ラザール・クロッシュ様。大丈夫かしら? 体調が悪いのでは? 私の夫は医者なのですけど、良かったら診察をお願いしましょうか?」

 フィオーラ様は心底心配した言葉と表情でそう問いかけたけれど、ラザールは立ち上がり、ジュストを睨みつけた。

「お前……絶対に、許さないぞ!」

「え? 僕……今日、何かしましたか?」

 白々しくジュストは困ったように微笑み、ラザールはそれを見て獣のような雄叫びをあげて椅子を蹴ると、そのまま去っていった。

「あらあら……まあ、あんなに元気ならば、きっと大丈夫ね。私たちも帰りましょう」

 辺りの使用人たちはラザールの異様な姿を見て、皆怯えていた。私がジュストの顔を見ると、彼はまだ演技中なのか、困った顔で肩を竦めた。


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