「そんなこと! ……いいえ。ラザールは、そうするつもりだったのね。証拠も揃えていたんだわ。だから、私には余裕の顔を向けていたのね」

「ええ……ええ。確かにこの世界には、実際ご自分で自作自演した悲劇の主人公になりたい方もいらっしゃいますから。僕らもそういう良くわからない思考の持ち主にされてしまうところだったんですけど……」

「けど?」

 もったい振ったジュストの口振りにじれったくなって、私は先を促した。

「あの時に飲んだお茶からも茶器からも、毒は検出されませんし、僕は少し前にかかった肺炎の治療中なので、少し吐血してしまっただけ……なのに、何故か毒を飲んだと自作自演したという証拠が何個か出て来るようですよ。不思議ですよね。仕掛け人たちも証言を脅されて強制されていて僕が奴の倍額払ったら、すんなりラザール裏切りましたね。ああ……あのお茶には、どうやら甘い砂糖は入っていたようですが」

「毒と砂糖を入れ替えたの……ジュスト。また、ラザールに罠を仕掛けたの?」