そうよ。待って。

 もし、私が騒いで何か証拠が出ることがあるしたら、それは、きっと私たちには何か不利な証拠が出て来るように仕掛けているということ……?

 だから、毒を盛った犯人であるラザール様は、心配そうな顔をしつつ落ち着き払い余裕の態度だ。

 きっと、何がどう転んでも、自分に不利にならないように準備しているから。

 こんな大事な席で、毒を盛ったのよ。事前準備くらい完璧にしておくはずよ。

 ジュスト……ジュストなら、こんな状況をどうする? そうよ。彼ならば何があっても、絶対に取り乱さないはず。

 ……落ち着くのよ。ミシェル。

 私は深呼吸しつつ震える手でジュストの手を掴み、彼は弱々しいながらもそれを握り返してくれた。

 ……ジュストは、生きている。良かった!

 彼が飲んだ毒が即死に至るような、強い毒ではないことはわかった。だから、これから一刻も早く解毒すれば治るはず。

 さっきまで私を嵐のように襲っていた恐慌は嘘のように消えて、ジュストが生きているならば、それを助けなければという一心で私は自分でも驚く程にスッと冷静になれた。