ローレシア王国の王家主催お茶会だから、高価で珍しいお茶が出て来ることは何もおかしくないけど、際立って特殊な香りだから気になってしまった。

「ミシェル」

 私が何の茶かと思いながらお茶に口をつけようとしたその時、ジュストが不意に私の名前を呼んだ。

「……何? ジュスト」

 彼は私に向けて微笑み、何かを伝えるように目を合わせると、先に新しく注がれたお茶を飲み、そして……口に手を当てて血を吐いた。

 ……え?

「ジュスト!!」

 私が椅子を倒し立ち上がった時、ラザールが嬉しそうな表情を浮かべたのを見逃さなかった。

 まさか!

「ジュスト……!」

 言葉もなく椅子から崩れ落ちてしまうジュスト、私は駆け寄り彼の名前を何度も呼んだ。

 ……どうして……いいえ。

 この状況から考えて、どう考えてもラザール様の仕業のはず。けれど、ここで私が騒いだところで何も出てくるはずがない。

 だって、そうでしょう。

 これは……国王陛下の計らいで開かれたお茶会なのよ。そこに毒を盛られたとしても、疑惑の段階で何も指摘出来るはずはない。

 国王陛下を疑ってしまうことになる。