それに、ザカリーにはこれからも守らなければならない女性と子どもが居て、復讐するにしても限度があったことも。

「……あいつ。また何か企んでいる」

 最後の忠告のつもりか、ザカリーは足で踏んで火を消した煙草を屈んで持った。

「王家主催のお茶会のこと? ああ……陛下に申し出る姿が目に浮かぶよ。僕らと仲直りしたいから、話をしたいので場を設けてくれってね……ありがとう。ザカリー。君と君の家族の幸運を祈る」

 ザカリーは何も言わずに、去って行った。何分か待ったのち、僕も新聞を畳んで立ち上がった。

 ラザールは産まれた時から権力を持つせいか、思う通り動かない奴には、ただ圧力を掛ければ良いと思っている。それでこれまでやって来たのだから、これからもそれで済むと思うだろうな。

 わかるわかる。ラザールの思っているようなことは、なんとなく。