「そう……わかったわ」

 ミシェルお嬢様は表情を変えることなく頷いて、手に持っていた開かれた本へと視線を戻した。

 新しく仕える事になった僕が気に入らないと言うより、おそらく全員にそういう気のない対応なのかもしれない。

 そういえば……彼女は高位にあるはずの伯爵令嬢にも関わらず、側近くに仕える侍女があまり続かないらしい。

 それを聞いてどんな方なのかと思っていたが、素っ気なく無口なことが気になるくらいで、僕の挨拶を無視することもなく、礼儀正しく上品な可愛いらしいお嬢様だ。

 あと、気が強そうな猫目も、魅力的で可愛い。人に慣れていない、きまぐれな子猫を見るような気持ちになった。

「……ジュスト。私の傍が気に入らなければ、お父様に言いなさい。私は気にしないから」

「はい……? かしこまりました。ミシェルお嬢様」

 お嬢様が気に入らないも何も、僕が会って挨拶してから五分しか経っていないんだが?