廊下を少し進んだところで、ジュストは当たり前のような顔をして私を待っていた。

「……こんな場所に、居なくても……さっきの部屋で戻ってくるのを待っててくれれば良かったのに。ジュスト」

 廊下を歩く私に肩を並べて、壁に凭れることもせずに立っていた彼も歩き出した。護衛騎士だったジュストは常に私の傍近く仕えるか、許される範囲の近い距離に居た。

 ……それが、彼の大事な仕事なのだと思っていたけれど。

「いえいえ。逆上したオレリー様が、ミシェルに襲い掛かったらどうするんです。僕のミシェルはとても優しいので、自分より弱いものには反撃できませんからね。念のため、助けがいるかと近くで耳を澄ませていました」

「……喧嘩はあの子が可哀想であった頃は、私はしてはいけないと思っていたの。ジュスト」

 私が隣を歩く背の高いジュストを見上げてそう言えば、彼は何か聞きたそうな表情になった。けれど、聞かなかった。

 詳しくは言いたくないことだと、察してくれたのだろう。

「どうやらオレリー様のことは解決出来たようで、何よりです。ミシェル。僕には兄弟は居ませんし、姉妹のことはお二人にしかわかりませんからね」

 解決はした。妹オレリーは私に対し、これから我が侭を言うことはないだろう。

 これまで何もかも許して来た姉が、もう無条件では許さないと、きっぱり宣言したのだから。