私がオレリーの部屋の扉を叩けば、すぐに返事が返って来た。きっと、私がここへ来ることがわかっていて、待っていたのだと思う。

「……オレリー」

 ベッドに座ったままのオレリーは、期待通りの私を見て微笑んだ。

 私たちは仲が良くて部屋を行き来していて、こんな場面も、これまでにたくさんあった。

「ミシェルお姉さま。あの……ジュストとのことは、申し訳ないと思っているわ。けれど、お姉さまにはラザール様という婚約者が居たから……だから、私は」

「あら。ラザール様は、欲しくならなかったの? オレリー」

 オレリーの言葉を遮って私が淡々と言えば、彼女は可愛らしく拗ねたように言った。

「……そんな、あの方はお姉さまの婚約者でしたもの。私は誰かの婚約者を取るような罪深いことを、考えたりしませんわ」

 オレリーは頬に手を当てて、にこやかにそう言った。

 私以外ならば、清楚で純粋そうなこの子の可愛らしい仕草に騙されてしまうはず……甘やかし過ぎて、妹をこんな風にしてしまったと後悔している姉以外は、きっと。

「では、ジュストだって、私が自ら選んだ結婚相手ですもの。要らないわよね? 嘘はいけないわ。オレリー。貴女が処女か処女でないかは、お医者さまならば判断出来るんですって。その芝居を続けるならば、今すぐに呼んでもらうわ。私はわからないけれど、貴族令嬢には屈辱的なことだそうよ……それで、構わないのね?」