これは彼がこの邸に来る前の話だし、その時既に葛藤がなくなった私には当然のことだったから、ジュストは知らなくても無理はない。

「あの子は、産まれた時から虚弱体質で……長くは生きられないと、医者に診断されて……私はすごく悲しかったわ」

「ええ……そうですね。ミシェルはオレリー様のために、これまで出来るだけのことをしていたと思います」

 ジュストの見えていた部分ではそうだろう。私だって、そう見えるように振舞っていた。

「だから、私はあの子が欲しがるものは、何もかも与えた。私も幼かったし、何をしてあげたら良いかわからなくて……そのくらいしかしてあげられないと思っていたの。あの子が欲しがりそうなものは、先んじて与えていた。何もかもあげたわ。お気に入りのぬいぐるみ、仕立てたばかりのドレス……お父様はそれを見ていて、私に物を与える時は二つくれるようになったわ。あの子が、必ず欲しがるようになったから」

 両親だって私が健康な身体を持つ姉だからと、病弱なオレリーを優先した罪悪感は常に持っていたと思う。けれど、そうせざるを得なかったのもわかる。