「それは、仕方ありません。ミシェルお嬢様は、常に傍に居る僕の事が好きなので、婚約者のラザール様も面白くないでしょうね。よそ見をしても、仕方ないですね」

 私は思わず立ち止まって、同じように足を止めたジュストの顔を見上げた。にこにこと感じの良い笑顔……いいえ。これに騙されてはいけない。

 彼だって、さっき教えてくれたでしょう。見掛けのようなわかりやすく見える部分には、騙されてはいけないって。

「……そんな訳、ないでしょう」

「僕は別に良いですよ。ミシェルお嬢様が二人の男の子を産み終わり、その後で愛人にして貰って可愛がって貰っても一向に構いませんし」

「そんな訳ないったら! いいえ……ジュストに、愛人なんて、そんなことさせられない。一体、何を言っているのかしら」

「……知っていますか。お嬢様。目は口ほどに物を言うと。僕のことが、好きなのではないですか?」

 確かに私をじっと見つめる目は、口と同じことを言っているようだった。

 ……「貴女は幼い頃から傍に居るこのジュストが、好きではないのか」と。

「私がジュストを好きだって、今まで一度でも言ったことがあった?」