……けれど、心のどこかで、罪の意識が湧いた。

 決して食べてはいけないとされる禁断の甘い果実、それを、今ここで私たちは口にしてしまったのだと。

 ジュストは私のことをそのまま食べてしまおうと思っているのではないかというくらいに激しい口づけを交わし、長い時間お互いを求めあってようやく離れた時には、私の唇はただ単に空気に触れただけだというのにひりひりとした刺激を感じていた。

「……反則ですよ。ミシェルお嬢様。僕の心を翻弄出来る術を、良くご存知ですね」

 深いキスを交わしていた間に既に停まっていた馬車は、どうやら私が帰るべきサラクラン伯爵邸にいる訳ではなさそうで、私はジュストの向こうにある小さな窓に映る風景を見て驚いた。

「……ここは、何処?」

 私は窓に近付き信じられない気持ちで、それを見上げた。とても広くて、大きな邸だ。しかも建てられたばかりなのか真新しい。

「ああ。これが、僕の邸です」

「ジュストの邸なの? すごいわ」