「私と結ばれるためだけに、どれほどの人を利用したの? 誰かの心の傷を自分の幸せのために利用するなんて……人を人とも思わぬ所業だし、なんだか倫理観も薄いし、性格も悪いし、私のことイラっとさせる天才で口も悪いし……貴方って、本当に酷い人よね。ジュスト」

「そうですね。僕は自分の目的のためには手段を選ばぬ、酷くて悪い男ですね。ミシェルお嬢様。ですから……このまま貴女のことを、攫って行っても構いませんか?」

 それこそ近づいた唇は触れ合う直前で、そんな時にこんなことを確認するだなんて、ジュストは本当に性格が悪い。

 ……だって、もし彼のことが嫌だと思っているならば、こうなる前に両手を出して突き飛ばしてしまっているでしょう。

 それだって、全部知っていて、だからこそ、こうしている。すべて計算通りみたいな顔をしているところも、何もかも、私は……。

「……ジュスト。好きよ」

 いつの間にか私たちの唇は重なっていて、抱き合ったままで激しく舌を絡ませていた。

 今の私には長年居た婚約者も居ない訳だから、彼とこうしていることに、誰にも罪悪感なんて抱く必要もない。