王妃様は怒りのあまり王座から立ち上がり、そんな彼女に落ち着けと国王陛下は宥めた。

「王妃様。僕らは愛し合っているというのに、彼の持つ権力に阻まれ、結婚を許されません。このままでは、二人で追手さえもわからぬ遠い場所にまで逃げるしかありません!」

 哀れに訴えたジュストに、王妃様はより私たちを救わなければと思ったようだ。

「……なんですって! 私に任せなさい。貴方は慣れない地での肉体仕事に疲れて亡くなり、そちらの可愛らしいご令嬢が、寒さに震えて食べ物を食べられなくなるなんて、絶対に駄目よ! ……あなた!」

 駆け落ちした私たちが悲劇的な終わりを迎える予想をした王妃様の目は『絶対に許さない』となっていて、国王陛下も『この程度であれば許してやれ』と庇えるほどではないラザール様のやらかしを聞き、大きく溜め息をついていた。

「そうだな……結婚していない状況での隠し子があるのなら、何も知らずに貞節を守っていた婚約者への冒涜に当たるだろう。クロッシュ公爵令息ラザール、サラクラン伯爵令嬢ミシェルとの婚約解消を命ず。これは王命である。もう下がって良い」