私は婚約者ラザール様と一度だけ踊り、いつものように紳士しか入れない喫煙室へと向かう彼を見送った。

 そこから友人たちを探すのも億劫で、一人夜会の会場を歩き出し、感じているのは疲労だった。

 ……何故かしら。ラザール様と一緒に居ると、とても疲れてしまう。

 以前は、私は婚約者だし、結婚するのならば、ラザール様に好かれたいと思っていた。

 ラザール様は令嬢からも人気があるくらいに、容姿は良いし、性格も少々気障っぽいところを除けば、特に気になるようなところはなかった。

 それに、将来は公爵になるのだ。そんな彼から好かれたいと思ってしまうのが乙女心というものだった。

 そんな彼に似合うようにいたいと私は必死で努力したけれど、結局はラザール様は、長年過ごした私よりひと目見ただけの妹オレリーと結婚したいと望んだ。

 今思うとそれを聞いて、私は彼への想いを捨ててしまったのだ。