明日、聞いてみよう。何かが起こるとしても、すべては明日なんだから。


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 王家が開催する城の夜会は常に大々的に行われ、そこに参加する貴族たちも数多い。色とりどりの美しいドレスを纏った令嬢や夫人たちが、パートナーとなる紳士と共に入場する。

 その相手は、大体が婚約者か、親族の誰か。

 という訳で、私の隣には婚約者ラザール様が居た。

 彼は黒髪を撫でつけて、いつもよりも落ち着いて見えた。近くに居る令嬢たちから熱い視線を向けられているけれど、気障っぽい仕草で私の手を取っていた。

 そして、その隣に居る私は無表情で、ただ入場の時間が来るのを待っていた。

「君が夜会に行きたいと言い出すなんて……珍しいな。ミシェル」

 夜会に行く時はラザール様の方から『仕事上どうしても外せない夜会なんだ』などど、私が誘われることが多かった。正直、お父様のエスコートの方が良かった。

 けれど、ラザール様をここへ連れて来ることもジュストからの指示なので、それは飛ばせなかった。