「……明衣。イニシャルはMか。」 狭いアパートの一室。俺は今日居酒屋で知り合った一人の女のことを思い出していた。 俺の手には、小さな指輪。 女物の指輪の裏には『KtoM』と彫られていた。 イニシャルがMの女なんて星の数ほどいるけれど、俺はどうしてもその条件に合う女に反応してしまう。 その女が、この指輪に彫られている人物でないことを祈るのだ。 きっと、巡り合うことはないだろう、その女性ではないように。