ここは私立の深山高校。
私立といっても、偏差値も人気度もそこそこ。
深山大学ってとこの附属だから、進学率は高めだけどそれ以外はいたってフツーだ。
そんな普通の私立高校の今じゃ当たり前の人工芝の校庭で私は告られた。
いや告られているってのが正しいかも。え?なんでかって?だって今なんだもん!告られてるのが!
つまりい、、、現在進行形なんですううううううう!!
夏帆bar
おかしいでしょ!!おかしいでしょ!?
高校二年の普通、、、(そうしておこう)の女子、藤森夏帆はただただ困惑していた。
目の前には学年一の遊び人と名高い、、あれ?そうだっけ?
まあ、そうらしい男子、宮木、、、、、、深、?とかいう黒髪サラサラ顔面神男子が手を出して頭をさげている。
こんなイケメン、、、私の中学校にはいなかったんだけど??!!!
さらりと同じ中学校だった男子たちに失礼な発言を脳内でしていることに夏帆は全くと言っていいほど気づいていなかった。
(そういう夏帆も、年齢=彼氏いない歴なのでこれを聞いた同中の男子全員にツッコまれそうなのだが)
ふっと顔を上げた深はこのくらいの年の男子には少し珍しい少し高めの声で「急にごめんね。返事はまた後ででいいから。じゃあまた」そう言って校舎に向かって走り出していってしまった。あの様子だとどうやらドッキリの類ではないだろう。
他に観客らしき人物なんてみえなかったし。でも、もしドッキリだったら、、、、まあ大丈夫か。
どうせ記憶なんてノコラナイんだし。てか、髪サラッサラだったなー。なんのシャンプー使ってんだろ?気になるー。
そんなしょうもないことを考えながら夏帆は校庭の隅に置いておいたスクールバッグを背負って、校門に向かっていった。
深bar
この人じゃなかったら、オレ半分終わりだ、、。
俺は、目の前にいる女子、藤森夏帆に告白している。まあ、喋ったことなんかないんだけど。
クラスでもそこまで有名じゃないし、いつも空気に溶け込んでる感じのやつで、性格が優しいってのはあるんだろうけど、透けてるみたいだ。
まあ、俺も似た様な感じかー。今じゃ目立ってるんだろうけど、どうせ俺の夢が達成できたら、あっさり忘れるんだろうからな。
そう考えると、甘ったるい香水の香りを身にまとってくる女も、普通の女子も、地味な子も、バチバチにメイクしすぎて原型がわかんねえ女も、少し可哀そうに思えてくる。だって、恋したって意味ないやつに時間を割いてくれてるんだもんな。
ごめん。と心の中で毎回思う。たとえ運命の相手が見つかっても一人にさせちゃうんだろうし。
でも、運命の相手ってどうやってわかるんだ?相手の頭の上にハートマークがでるとか?
それだったらめちゃくちゃ見つけやすいのに、、、、、
「あんの、天使、、ぜってーなめてるよな、俺の事!」深の声色がガラリと変わる。先ほどまでイケボだったのに、ヤンキーボイスに早変わり。
明らかに怒りを滲み出している深の脳内にあるシーンが浮かぶ。
「はい、、?ちょ、ちょっと待ってください。俺、成仏できないんですか?」金色の雲が浮かぶ場所。天界。
交通事故であっさり亡くなった俺は俺の魂担当の天使の発言に俺は倒れそうになる。
「そうねえ。まあそうゆうことになるかなー。ごめんねテヘペロ」やけにチャラすぎる天使だということにも驚いていたのに「成仏できない」という新事実付き!わあすごい!ひどすぎる!これでもちゃんと生きてきた方だと思ったんだけどな、俺。
担当はちゃんとした天使&人間への輪廻転生というのを可能にするにはカンボジアに学校造るとかしなきゃいけないのかな、、、、、知らんけど。天界の仕組みとか分かんないけど。泣いちゃうよ?俺。
そんな俺に天使はやけに甘ったるい声で「貴方、、、、イケメン!めっちゃ顔面偏差値たっかい!私の好みー!」などと死ぬほど関係のない事を言ってくる。さすがの俺もキレる寸前。「え、あの。そういうのいいんで。え、?本当に無理なんすか?俺が成仏すること」少しドスのききかけた声になりつつも、冷静になろうと頑張って心を落ち着かせる。
「うーん、、、無理ってわけじゃないけど、、ま!いいや。ほんとはいけないんだけど、君、私の好みだから教えちゃう。簡潔に言うと成仏するにはねー、運命の人を見つけてきてーその人と結ばれなきゃいけないの。そうすれば無事解決!ってわけ。」純真無垢そうな笑顔でいとも簡単に言いのける。「いやいや!あのさ、あんた天界にいるからわかんねーだかもしんねーけど、世界の人口知ってる!?女性は38億!その中から探すのどれだけ大変かわかって、、」「あーもう、五月蠅いなあ。ちょっと黙って。もうすぐ大事なドラマの最終回始まるから!とりあえず、運命の人の近くに転送してあげるから頑張って!じゃ!」天使がそう言い終えるのと同時に俺はこの高校近くのアパートの一室にいたって訳。
めちゃくちゃご丁寧に生徒証と制服入りのスクールバッグも置かれてたから、結構なヒントであることは確か。
それに転校生としての手続きもされてあったぽいからそこはすげえって思った。
だからこそ、運命の相手って簡単に見つかるくね?って思っちゃったんだよ俺。
でもさ、いざ行ってみれば、深山高校は私立でしかも全校生徒700人越えの超マンモス校だったんだ。
そんな中で俺の運命の相手を探すと思うと心がズーンと重くなるんだよなあ、、、
ああ、早く成仏したいわ、、、、
夏帆br
ふわあ、、、。ベッドから起き上がって押し入れにしまわれた制服を取り出す。
クシュン!少し埃っぽい。妹の日向と同じ部屋だからお母さんが掃除してくれてるみたいだけどやっぱり私の方は放置しがちだよねー。
時計を見ると8時10分。深山高校の始業時間は8時15分。
「今の私だとできないことも多いけど、これに関しては便利ー」そう言って私は学校へ向かった。
キーンコーンカーンコーン
始業のチャイムが鳴る。それを聞いて慌てて校舎に入っていく生徒たちを窓から見下ろす。
昔は私もあっち側だったなー。ふと肩を叩かれて慌てて後ろを振り向く。後ろの席の、、、ああ、宮日那唯明(みやひなゆいあ)さんだ。
「ね、夏帆ちゃんって何処からきてるの?」唐突な質問だなと私は思った。宮日那さんはいつもこんな感じ、、、、らしい。
学年でも「どこか憎めない不思議ちゃん」という愛称が陰でつけられている。
「私は南池袋の方から来てるんだ。どうして?」そう聞くと宮日那さんは首を傾げて「ふうん、、、。」と短く言い黙ってしまった。
何なんだろう、立場上色々わかっちゃう私からしても本当に謎が多い人だ。
ガラリと教室の扉が開いて担任の先生が入ってくると夏帆はすぐに宮日那さんのことなど忘れてしまった。
「起立。礼。さようなら」
ショートホームルームが終わりクラスメイト達が教室を出ていく。
私もそれに続こうと机の整理をしていたら、「おーい、藤森ー。」と自分の名前を呼ばれる。
声のする方を見ると、そこにはクラスメイトの男子。「コイツがなんか用事あるってー」彼が指さす方向に視線を向ける。
うげっ。忘れてた。高身長で顔面偏差値化け物の髪の毛サラサラ男子。宮木深。
今も周りの女子たちの熱い視線を浴びている。ああ、面倒くさい。私は日向のJKライフをみたかっただけなのになんでこうなったんだろうか、、、、。
誰にもバレないようにふうと息を吐いて宮木の所へと向かう。
「どうかした?」そう言葉を出すのも心底面倒くさい。昨日までなら口にする言葉数は一けた台で終わらせられたのに。
今の状況になれると人と会話をするのも面倒くさくなるものなのだろうか。
顔を上げて宮木の顔を見ると不思議そうに私を見つめた後、ハッとしたような顔になり「いや、その、、、、」と言って黙ってしまう。
用件があるならまずそれを整理して来てほしいなあ。
貴方様のファン、女子力高くてビジュ良くてそして何より結構怖いんですよ?知ってます?
そうは思うが決して顔に出さない。だってそんな顔をしたら宮木の後ろにいる女子たちに目を付けられ、最悪殺されかねる。
校舎裏に呼び出され「ねえ、何様のつもり?自分がモテてるとでも思うわけ?まじ、だっさー!ウケるー!」、、、とかなのかな。
「ら、ライン交換しない?ほら俺ら委員会一緒だしさ、色々じょーほー交換とかしたいし。」そう宮木が言うと私の反応より先に周りの女子が声を上げる。
「深、私も図書委員だからライン交換してー、ね、いいでしょ?」瞬く間に図書委員の女子たちが宮木を囲む。
どっから湧いて出てきたんだ。もうホラーだよ。
そう心の中でツッコミを入れながら私は宮木にスマホを渡す。宮木はほかの子のスマホに埋め尽くされながらもどうにか登録できたようでちょっとするとスマホが人ごみの中からひょこっと返ってきた。
大変だねえ、人気者も。そういえば日向はどうしているだろうか。
ふと妹の顔が浮かぶ。今の時間は部活だろうから華道部にでも行ってみるか。
華道部のある2階に向かおうと階段を下りているとブブブとスマホのバイブ音がして私の体を揺する。
何だろ。またなんかの広告かな。そう思いスマホのアプリを開くとそこには宮木と書かれていた。
(うわ、アイツかい、、、!面倒くさいしスルーでも、、!?)
宮木の送ってきたメールにあるお辞儀をしている可愛い柴犬のスタンプが目に入り思わずメールを開いてしまった。