─翌日。
凛音から何を言われるかドキドキしながら学校へと向かった。心臓の音はまるで祭りの時の太鼓のようだった。
教室に入ると凛音と目が合う。何気なく挨拶を交わしたがその日は気分が落ち着かず、授業に集中できなかった。

放課後にやっと凛音は近づいてきた。
「美咲、ちょっといい?」
「ひゃい!」
緊張して声が裏返ってしまった。
「大丈夫だよ、小説の事かな?」
「そう。まず、ここの描写が甘い、視点が分かりずらい、一人称がズレてる、句読点忘れてる」
「えっ」
自分が思っていたよりもダメ出しがたくさん出てくる。私は驚きで何も返せなかった。
「でも、設定は良かった」
「あっ」
今のは褒められたのか。私は嬉しさのあまり固まってしまった。
「次はいつ書く?」
「えっとー。いつにしよっか?」

私はそれから数ヶ月間、ダンス部の活動と並行しながら小説を書き続けた。最初こそダメ出しが多かったが、だんだんとダメ出しの回数も減り、上手くかけるようになっていったと思う。ダンス部の方は前と変わらずだ。

そして、ダンスの大会当日となった。
先輩は今回の大会を逃すともう全国優勝への切符はつかめないだろう。大事な大会だ。ミスはできない。

「では行きましょう!次はこの学校です!」

私たちの番が来た。大丈夫だ。ここまで練習してきたのだ。それをぶつけるだけ。今のターンは良かった。私がミスしやすいのは次のステップ。今度はミスする訳にはいかない。ここで決めなければ────。違う。まちがえた。ミスをしてしまった。大丈夫まだやり直せる。このまま最後のポーズまで。

やり切った。私はやり切りはした。でも、一つだけミスをしてしまった。吉と出るか凶と出るか。

「トーナメント!勝ったのは!こちらの学校!」

負けた。私たちは負けたのだ。私のミスのせいで。
「美咲ちゃんごめんね。最後良かったよ」
「先輩!すいません。私のミスで」
「美咲ちゃんは完璧だったよ」
「そんなことは…」

ヒソヒソと審査員のこんな言葉が聞こえてきた。
「1人の生徒は完璧だったんですけどね」
「なんだかチグハグでしたね」

やっぱりそうだ。完璧なのは先輩だったのに私のミスのせいで足を引っ張ってしまったんだ。私はこの時絶望とともにとある決心をした。ダンスはもうやめると。