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 この七龍国には七体の龍が存在する。
 最初に白龍と黒龍が現れて、昼と夜を作った。
 次いで空と大地、最後に人間と獣を生み出した。
 しかし住処を巡って人間と獣は争い、憎しみ合い、互いを殺し合った。
 人間たちは獣を避けるように一つの場所に集まると、やがて長を選んで国造りを始めた。
 その様子を見た二体の龍は、人間たちの国が未来永劫に続くように長と契約を交わすと、国を守護する五体の龍を生み出した。
 
 猛り狂う炎を守護する赤龍。
 揺蕩う水を守護する青龍。
 隆起する大地を守護する黄龍。
 粛然な緑を守護する緑龍。
 盤石なる鋼鉄を守護する紫龍。
 
 五体の龍たちは自らの力を国中に流すことを二龍に命じられると、分散して国の各地に拠点を築く。
 五龍たちは国の隅々にまで力を流して、永遠なる国の発展と繁栄を二龍に約束させられたのだった。
 そんな龍たちが流す力のことを、人間たちは「龍脈」と呼んで、その恩恵に感謝を捧げた。
 しかし龍脈が途絶えれば、国を守護するその力は消えて、国が傾いてしまう。
 やがて龍脈を管理する存在が必要だと考えた人間たちは、人間たちの中から代表者を決めて、龍脈の管理を命じた。
 龍脈を管理する者は、生涯七龍と生活を送り、苦楽を共にすることになった。
 人里を離れて、生涯を七龍に捧げる者たちを哀れに思った七龍たちは、龍脈を管理する人間に二つの奇跡を授けた。
 一つは七龍の加護を、もう一つは人間の伴侶を。
 龍脈の管理者は七龍の力を与えられた半身――「形代」として七龍と同等の存在となり、人間と七龍を結ぶ(えにし)となる。
 そして七龍と同じ久遠の時間を生きる人間を支える者として、同等の歳月を過ごせる伴侶を迎えて孤独を慰めるようになったのだった。
 人間たちは国を守る七体の龍に対する感謝を忘れないように、国の名前を「七龍国」に改めると、()()()()()もそれぞれ七龍に因んだ名前に変えたのだった。
 そして国の中央部にある白の地に七龍を祀る宮・柳絮宮(りゅうじょきゅう)を建てると、その柳絮宮に降り立った二龍は宣言する。
 ――人間と七龍が手を携え合う限り、我ら七龍たちは国を守り続ける、と。
 二龍は自分たちの分身である五体の龍に国を任せると、宮から飛び立つ。
 人間と七龍が古の誓約を守り続けているか、いつまでも七龍国を見守るために――。

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