何も答えないでいる私に、佐藤さんは話を続ける。
「この学校って、ギャルが多いんだね。チャラい女子も多い。清楚な子、まだ見たことない」
「確かにギャルは多い…」
ついつい反応してしまった。少し後悔。
「俺、ギャルって分類に入る女子が一番嫌いなんだ。周りの女子が減って、マジで清清してる」
これはもう、聞いてしまうしかないじゃんか。はぁ、私、結構人に流されやすいかも。
「…何で周りの女子が減ったの?」
この質問を待ってました、と言わんばかりに、佐藤さんは目をキラキラさせた。
「俺には忘れられない初恋の相手がいる。君たちとは正反対の可愛い子が大好きなんだ♪って言ったの。そしたらね、少しだけ女子が減ったんだ」
「え、でもそれだけじゃ、こんなに女子の数は少なくならないよね?」
「うん。追加でね、いつまでもくっついてくるような君たちのこと、大嫌い。噂ばかりする君たちが大嫌い。って言ったんだ」
け、結構言うんだね。少し意外だった。
言うならもっとマイルドかと思ったけど、突き放すように冷たく言うなんて想像できなかった。
でも、何でわざわざ私に言うんだろう?しかも、そんな嬉しそうに。……わけ分かんないや。
「その初恋の子、最近知ったんだけどこの高校にいるっぽいんだ〜」
「で、その子は見つけたんですか?」
ふふふ、と笑う彼は口に人差し指をくっつけて「なぁーいしょ♪」とルンルンに言った。
なんか、最近、佐藤さんに少し女子っぽさも感じるようになった。
上品と言ったら良いのかなぁ。それこそ、佐藤さんは男子にあまり好かれてなさそうだ。
「あ、ねぇ!海の方を見てみて?空が晴れて来たよ!」
佐藤さんの言葉に、思わず思い切り海の方を振り向いた。
「わぁ、すごい!めっちゃ綺麗!海もキラキラしてるっ!」
良かったぁ〜見れて。……本当に綺麗。目が離せない!
そんな私に、佐藤さんがクスッと笑った。少しムッとしたけど、海を見てると何にも気にならなくなる。
写真撮りたかったな……今、スマホは家にあるんだよねぇ〜。家に帰る頃には、今のような綺麗な景色はないだろう。
そんな時、隣からパシャッと音がした。
振り向くと、そこにはスマホを持った佐藤さんがいた。