隠し撮りしたって言ったら怖って思われるだろう。それに、一歩間違えれば立派な犯罪だ。

だけど、私はこの時の美記を撮りたかった。

こんなに眩しいくらいの笑顔で、彼が小さなある花を持って私のことを見たら撮るしかない。

「この花、俺がせっかくあげようとしたのに、夏葉ったら空の写真を撮ってた、なんて言っちゃうから悲しかったんだよ?でも、本当は違ったんだね」

「スマホで撮ったから、少し画質のこととか気になってたけど綺麗に現像出来て良かった!……この花も、綺麗に映ってるね」

「うん。俺のお母さんがたまたま育ててたセンニチコウの花言葉が色褪せない愛で、それを知ったら無性に夏葉に会いたくなって……いきなり夏葉の家を訪ねたんだよね」

お花って、人間が言いにくいことも全部伝えてくれる。

花言葉を付けたの、一体誰なんだろう。その人は天才だと思う。

「ちなみに、こっちにはあの海の写真を飾ってるんだ♪」

雨上がりの海、雲から微かにはみ出た光で白く輝いている。神々しいこの光景に、きっと誰しもが目を奪われるのだろう。

だからこそ、私はこの写真をコンテストには出さないと決めている。だって、これは美記との大事な二人だけの思い出だから。

「これをコンテストに出さない夏葉は、やっぱかっこいいしすごいよ。そして、何より嬉しい!俺さ、この写真をホーム画面にしてるんだ♪いつも気分が上がるから」

「私も。この写真、撮ったのは私ではないんだけどね?スマホを持って来ていなかった私のために撮ってくれてありがとうね」

「んーん。それに、写真を撮る時にアドバイスしたのは夏葉じゃん。だからこんなに良いものが撮れたんだよ。ぶっちゃけ、ここに飾るのも勿体無いくらいだよ。玄関なら俺の写真よりも合ってるかなって思ったんだけど」

「あはは、美記の写真はあまり人に見られない方がいいからね?美記が恥ずかしいでしょ?」

「まぁね。てかさ、っと」

いきなり話を変えたかと思いきや、いきなり私にグッと近づいて来た彼。

そして、不意打ちの「ちゅっ」

「ぷっはは、一気に顔赤くなっちゃった。いきなり口には早すぎた?でも、前に何回かしたし…ダイジョーブだよねっ」

今までとはまた少し違うキスだった。優しすぎておかしくなりそうなそれに、私の頭の中はショートしてしまった。

そのままお暇様抱っこで寝室まで連れて行かれ、流れのままに私は押し倒される。



 これからどうなるのかわからない未来に向かって、確かに私たちは前を向いて足を進めた。