そう。いつだって私は弱くて、惨めで醜い。

誰にも好かれて貰えるような資格を持つ人間ではないのだ。

「聞いてる?」

そう言って、通称顎クイをする彼は、今は美記そのもの。彼の目には、私だけが映っている。

私、こんなに恋をする乙女のような表情をしてたっけ?

「き、きき聞いてます。で、でも、私なんかのどこが…す、好き……好きなんですか?」

「それ、俺さ、言葉で表現するの得意じゃないんだよねー。うーん。キミの全部が好きだよ」

ボッと一気に顔は熱くなる。この台本を作ったの、実は私じゃなくて美記だ。

『ラブラブなストーリーを作っちゃおー』

なんて言っていた美記を、無理矢理にでも引き止めるべきだった。

ただ単に、美記自身が私とイチャイチャしたいだけじゃん?そんなの。

クラスメイトも最初は驚いていたし、やや冷たい目で見ていた。

でも、なんやかんや言っても優しいのが私たちのクラスメイトだ。

もちろん、今は私たちがメインのシーンだけど、他の子の出番もあるし裏方で活躍してくれている人たちもいる。

「んで?キミはどうなの?俺のこと、好き?」

こんなにみんなが頑張ってくれているのに、この人ったら私とイチャイチャすることしか考えていない。

この役自体も性格はほとんど美記そのものだし、役の力も借りて私に好きと言わせる気なんだ。

練習では私は彼に「好き」だなんて言ってないけどね。

「な、なななな……えと、その、私も、あなたのことが好き…です」

あーあ、言っちゃったよ。好きって言うの、結構恥ずかしい。

「っわぁ?!」

「もう、そんなかわいー顔しちゃってさ、煽ってんの?それとも、無自覚?」

え、ええええええええええぇ?!な、何してんの?台本と違うんですけど!

何で私を抱きしめちゃってるのってばっ!

「あ、あああ、え、は、え、ななな…」

これは役っぽくリアクションしているけど、ここ二週間ほどスキンシップがなかった私にとっては充分なダメージだ。

だから、これは八割が素の反応。

「俺の家、地味にお金持ちでさ…だから、キミを世界まで連れて行くこともできるよ?贅沢だってできる」

「いや、それは遠慮しときます。私は、世界なんて望んでないです。……あ、あなたと、一緒にいれればそれで…んぅ?」

ちょちょちょっ!こ、ここは公の場だって!何本当にキスしちゃってんの?

てかてか、私、今キスされてそのままの反応をしちゃったよ?恥ずかしい…

そもそも!本当は私をお姫様抱っこするはずだったよね?もちろん練習でもお姫様抱っこさせてないけどさぁ。

「はぁ〜っ可愛い。可愛い可愛い可愛い!これからは俺たち、恋人同士だね♪」