「お疲れ様でしたー!」

私は今までにないくらいげっそりとしている。撮影が終わり、私は楽屋の椅子にもたれかかっている。

「無理…映画公開が今から一ヶ月後でしょ?その一週間前に本の出版が……そして文化祭…死ぬ気かこれ」

「そんな口悪い事言わないの。俺は夏葉と役だったとしてもイチャイチャ出来て嬉しかったけどなぁ?」

イチャイチャだなんて誤解されそうなこと言うな馬鹿。

映画の中での最大の愛情表現はハグまでだ。これをイチャイチャとは言わなくない?

……恋愛に疎すぎてよく分からないけれど。

「それにしても、今でもまだ実感ないなぁ。佐藤さんと夏葉さんが付き合ってるなんてさ。俺失恋しちゃったし?」

「え!海って好きな人いたの?」

「ぶはっ、海、今好きな人公開してやれよ」

「ふざけんな。調子に乗るなよクソが」

何やら最近、美記と海の仲が悪くなっている気がするけど、もしかしたら逆に仲良くなっていたり?

海がプライベートでもたまに不良になる時がある。

多分不機嫌な時にしているんだろうけど、私には二人が仲が良いようにしか見えない。

「あのぉ、ある人がいらっしゃったんですけどぉ」

「「「あ、すみません」」」

「ではお入りください」

スタッフの口調からして偉い人が今からいらっしゃるんだろうな。

と心構えていたら、予想は合っているけれど意外な人物が目に飛び込んできた。

「や。元気にしてるかな?」

「え、お、おおおお、お父さんっ?」

「「…お父さん?!」」

「久しぶりだね夏葉。知らないうちにこんなに立派になって。お二人さんも、夏葉と仲良くしてくれてありがとうね」

美記と海は目を綺麗にまんまるにして、口をぱくぱくしている。

お父さんはそんな二人を見て機嫌が良さそうだ。

「何でいきなり?…てか!私の過去知ってるくせに仕事バンバン入れないでよ!まだ慣れてないのに」

「だって、今の夏葉は素敵な二人が側にいるじゃないか。それに、栢山くんも大きくなったし、前よりも安心できる」

「いやいやそういう問題じゃなくて!」

「それにしても夏葉は忙しいね♪もっともっと、小さい頃の空白を埋めるように仕事をしてくれるかい?今、再び注目されているんだ。……今回は一人じゃないだろう?成長しただろう?きっと夏葉なら大丈夫だよ。母さんの子だから」

忙しいことも知っていて私にハードスケジュールにさせたんだ……本当に怖いなこの人。