私たち三人が主人公を演じられるのも、奇跡そのもの。今役者を出来ているのも奇跡。
全部が奇跡で満ち溢れているこの世界で、今日も私たちは生きているんだ。
あぁ、そういうことですか。あのスタッフ(男)さんが意地でも私の小説をたくさんの人に見せたかった理由が分かった気がする。
私の小説のテーマは「奇跡」だから、あえてこのメンバーを出演させることにしたんだ。
…私の家にこんな大勢の来客は初めてだなぁ。知らないうちに深谷サンと上之さんまで居るし。
「あははは……って、夏葉?!大丈夫?痛いところとか無い?熱…はあるんだろうけど」
「っ!な、何でもない!…ただ、みんなとずっと一緒にいたいなって、思っただけ…」
いつの間にか溢れていた涙を美記はそっと拭ってくれた。と思えば、今度は美記の腕の中にいる。
大好きな人の温もりが、私の涙腺を崩壊させる。
「うんうん。どうしたの?よしよし…落ち着いて」
「うぅ、っ…うわぁ!」
驚きすぎて一気に涙がひっ込んだ。……いいいいい今、私の頭を…ぽんぽんしたっ?
「もう、理由は知らないけど泣かないでよ。夏葉のお母さんに俺が泣かせたって勘違いされたら俺が困る」
「……あの、俺たちはもう帰るね。佐藤さんと夏葉さんは最後まで話をしてて?…ってことで、上之さんと深谷サンも現場に戻るよ。あ、夏葉さんは体調に気をつけて!早く元気になるといーね!」
「う、うん」
バタバタと三人が帰り、少し静まったこの空間には私と美記だけ。
お母さんはどこにいるかは分からないけど、少なくともリビングにはいない。
「夏葉、もう一個大事な話をしても良い?」
私が彼の腕の中でこくりと頷くと、なぜか私を美記と向き合う形にさせる。
そうして私の目を見ながらこう言った。
「俺の初恋の子、実は同じクラスにいるんだ」
「っへぇ!同じクラスだったんだね!私全然分からなかったよ」
……チクチクする心に無視をして、私は笑顔を貼り付ける。演技の練習だと思えば良い。
「うん。俺と一緒にいた事があるってことは思い出してくれたんだけど、俺の気持ちには気づいてくれない」
「あはは、その子、鈍感なんだね」
チクチクチクチク……あぁ、痛いなぁ。もう、この気持ちに無視なんて出来ないよ。
どうすれば忘れられるの?無理だよこんなの。忘れようとすればするほどどんどん好きが募るばかりだ。