……こんなに、足が速くて顔も良かったらさ、不良でもモテちゃうよ。
結果は私たちのクラスが二秒差で一位でゴールした。
応援も終わり、点数が隠されてから三種目が終わった。
応援は点数には含まれないけど、応援大賞をもらえるかがかかっている。
私は忙しくて応援団なんてしている余裕がないのに、美記はしれっと応援団をしていた。
つい一昨日から演技の練習も始まったというのに、彼はピンピンしている。
そのまま私たちのプチ演劇が始まった。
「インターハイ出場がかかってるんだ!この試合から全力を注がなくちゃいけない!」
「分かっているよ。僕だって一試合も負けたくはないさ」
美記はクールだけど熱血な部長役、海は大人しめな部員役だ。
みんな、彼らの演技に夢中になっている。
……私は、女子だけど男子役をすることになった。ウィッグをつけてボーイッシュな見た目になっている。
身長低い男の子だけどバレーは上手設定だ。
実際に試合もして、ワイワイしながら最後の場面になった。
インターハイ出場が決まった瞬間、私たちは肩を抱き合って喜ぶ。
「僕、部長について来て本当に良かった!ありがとな」
「俺は何にもしてねぇよ。お前らが一生懸命に練習した成果が出ただけだろ?俺の方こそ、感謝しかないよ」
「僕も、この身長で迷惑をかけた時の方が多かったと思う。だけど、見捨てないでくれてありがとう」
ハイタッチをした私たちは、お互いの顔を見て思わず笑ってしまった。
演技上そういう予定だったけど、今の笑顔は役ではない素の笑顔だった。
そして、私たちが「今この時が、さいっこうの夏だ!」と言って終わる。
……私が想像していた最悪なことが、今起きてしまった。
校長室に呼び出された時、私は校長先生に「文化祭でも演技を披露してくれないか」と言われるのではないかと思っていた。
それがまさに現実になっている。私を殺す気かな?
「本当に良かったよ!私も柄になく泣いてしまいそうだった。この感動を、もう一度文化祭で出来ないかな?」
普通、校長先生に逆らおうとする人はいない。それは私たちも同じだった。
「「「もちろんです」」」
「ははは、もしかしてこれも演技だったりする?」
……えぇ、もちろん私の場合は演技でございますとも。