『よし、こんなもんですかね!いやぁ、霜島さんの文章力は凄まじいですね〜。僕なんかに思いつかない発想でさりげなくフラグを作るところ、尊敬します』
「私は映画化するにあたってのカメラワークなどの知識が全くないので、ただ文章を書いていただけです。本当にあなたのおかげです。私、こんなに素敵な台本が出来上がると思うと、ついつい口角が上がってしまいます」
『ははははは、それは良かったです。僕の都合でリモートになってしまって迷惑をかけました。こちらこそありがとうございました。映画化、楽しみです!絶対に見ますね!』
「ありがとうございます。私たちも演技で魅せられればなと思います。お疲れ様でした!」
ふぅ〜とため息をつき、天井を見上げる私。ちなみに時刻は午前一時十五分。
昨日の午後四時半くらいから作業し始めた私は、もうクタクタだ。流石にきつい。
「脚本ってこんなに大変だったんだなぁ」
自分の部屋に漂う独り言は、ただただパソコンの画面に吸い込まれていくだけだった。
パーン、とグラウンドに響くのはリレー開始の合図。
「がんばれ」という応援の声が飛び交う中、十分もしないうちにアンカーへとバトンが渡る。
私は今走っている子にバトンを貰い、次は男子にバトンを渡す。
私たちのクラスは今のところ順位は一位。このまま行くか、男子でどこかしらのクラスに抜かされるか。
ただ、私たちのクラスと二位のクラスとの差は半周程ある。これを抜かすのは厳しいのではないかと思う。
……え?待って待って、どういうこと?
私たちのクラスとぐんぐん距離を縮めてくる人がいた。二位を抜かし、三位だったはずのそのクラスは二位まで上り詰めた。
そのランナーは、なんと海だった。
「夏葉、アンカーお疲れ様。…でもさ、海やばくね?あんなに足が速いなんて知らなかったわ。練習の時は姿を見せていなかったし、これがバトンパスもぶっつけ本番だってのに」
「だよね。あんなに距離があったのに、もうここまで追い詰められてる。次のランナー次第で私たちは一位になれないかもしれないね。海って、才能を無駄にしているような気がする」
絶対に写真部にいるのは間違っている。それにずっと不良キャラ演じているのももったいない。
顔も整っているんだし……って、そうか。海は女子に絡まれたくないだもんね。