「……あれ?!美記、今日朝練あるんじゃなかった?そろそろ急がないと間に合わないよ?ほら、急ご!」

今の時刻は午前七時十分を過ぎている。確か七時半には朝練始まるんじゃなかったっけ?

五分は大きいから、今からゆっくりで歩くんじゃ朝練に間に合わないんじゃないかな。

さっき七時五分に美記と会った時点で、三分余裕持って着くか着かないかの際どい時間だ。

…嘘はついていない。あの質問からも上手く話を逸らすことに成功した。

「あ、そーだった。えーマジかー。もうめんどくさくなってきたから朝練サボろうかな」

「……お時間とらせてすみませんでした!ってことで、今からダッシュだよ?美記は運動神経いいんだし、体力もあるし大丈夫だよね!ほら行くよ!」

「…っえ、え、えぇ!?ちょちょちょ、ちょっと待って!」

私は美記の声を無視して軽く走る。そんなに慌てるほど美記には体力がないのだろうか。

それとも私のペースが速すぎたかな?……いや、どちらもありえないはず。

「ね、ねぇ!俺的には、そのぉ、別に気にしないんだけどさぁ?……手、繋いだまま学校に行ってもいいの?あ、俺的にはそっちの方がとっても嬉しいんだけど、前に夏葉、噂されるの嫌って言ってたから……」

……ん?……んん?……あれ、なんで私は美記と手を繋いでいるの?

「そんな、あれ?って顔しなくても……ほら行くよ!って俺の手をとったの夏葉だし」

あ、そうだったの?てか、そんな気がしてきた。無意識すぎた。……って、無意識はやばくない?

なななななななな?!何恥ずかしいことしてんの私!

一気に私の顔が赤くなる。自分でも分かるくらい、今の私は照れてユデダコ状態だ。

うわぁ、何やってんの私……

「はは、そんなに急に立ち止まらないでよ?あと少しでぶつかるところだったんだから。ほら、赤くなるのは自由だけど一緒に行こ?はは、照れちゃって可愛いな」

「…え?え、え、え、か、可愛い?!私が?そんな冗談恥ずかしいって!てか手!離してよ!」

「やーだもーん!夏葉に避けられた分、これくらいいいでしょ?絶対に学校まで話さないから♪それに、冗談じゃなくて夏葉は充分可愛いから自覚してよね?」