「……かわい」

「「え?」」

ん?今、なんて言ったのかな?

聞き取れなかった。でも、愛美と被ったってことは、何かしら驚く内容を言っていたのかもしれない。

愛美が聞き逃す、なんてことはしないはずだから。


結局、なんて言ったのかが分からないまま朝の会が終わった。

その後、道琉が私の元へ駆け寄ってきて「佐藤のやつ、愛美のこと、どう思ってそう?」

って聞くものだから、ついつい私は吹き出してしまった。だって、これじゃあ道琉が愛美のこと好きなのバレバレじゃん!

彼は不快に思ったのか「え、何。何にも面白くないだろ」と言って顔をしかめた。

「佐藤さん、多分大丈夫だと思う。愛美のこと、恋愛感情を抱いているように見えなかった!」

「…そっか、ありがと。愛美のこと、よろしくな」

そうして道琉は、あからさまに私の言葉に安心して席に戻っていった。

本当に分かりやすいんだよね、道琉って。あとで愛美にも報告しようっと!

あ、やばい。次は移動教室じゃん!急げ急げ……

「あの、夏葉さん。移動教室らしいんですけど、俺、どこか分かんなくて」

あぁ、そうだった。二学期からの転校は珍しくはないけど、すでに出来た友達と行動するのが人だからなぁ。

残されてしまってもしょうがないか。

「んで、ついて行ってもいい?」

「いいよ。でも佐藤さんて女子から人気だから、私が連れてってあげるって感じで女子に囲まれながら移動してたのかと思った」

「あー、遠くから視線は感じるけどそんな親切な子達じゃなかったみたい」

アハハ、何それ!でも、顔がいいだけでその女の子のタイプじゃなかったのかも。

愛美も私のこと置いていくし、余計私が頼りだったのだろう。…これは決して自意識過剰ではなくて!

「初めの印象からも薄々感じてたんだけどさ、夏葉さんて、天使ですよね?」

「っぷ!」

思わず吹き出してしまった。なんだなんだ?私が天使だって?ナイナイナイナイナイナイ!

そんなこと、一回も言われたこともないし、心当たり、ありません!

「そんな吹き出すこと?夏葉さん、面白いね♪」

「私なんてただのネズミですよ…身長小さいだけの女子です」

「イヤイヤ、もっと自分に自信を持ってもいいと思うよ?」

うーん?自身も何も、可愛くないのだからしょうがないじゃん?

あなた、タラシですか?それとも、新手の友達詐欺?…なんだそれ。あ、さてはおバカさん?