「うぅ、みんなひどいんだよ?私のこと泣けない天才だって言うんだよ?泣けないなら天才じゃないじゃん!」

「はは、夏葉、そんなこと言ってはいるけどさ、結構楽しそうじゃん」

「え?」

「顔がなんかニコニコしてる!」

に、ニコニコ?うそ、え、まじで?やばいってそれは……日々の楽しさを誤魔化しきれてないってことじゃん!

そりゃあ、泣けない天才って現場では言われることあるけど、一応天才って言われてるからね。

嬉しくないはずがない!…のだけれど、流石にそこまで調子には乗れないよ。

「それより、道琉とはどうなの?上手くいってるんだよね?」

「あ、あぁ、それがね……」

え、嘘嘘…何その反応。悪い方か良い方か……

「溺愛されすぎて死んじゃいそうっ」

お、そっちか。なんだなんだ、順調そうじゃん♪もう、赤くなっちゃって!かわいいなぁ。

あ、そうだ、今の気持ちを聞いて役作りの参考にしようかな。よし、早速インタビューしちゃおう。

「ちなみに今のお気持ちは?具体的に言ってくれるとありがたいです」

「い、今の気持ち?うーん。ドキドキキュンキュンはもうずっと止まらないかな……あと、嫉妬の気持ちもあるかも」

キュンキュン以外に嫉妬かぁ。私の彼氏なのに、他の女子と話しているところを見て嫉妬、と言う感じなんだろう。

……嫉妬って、どんな感情?私、恋愛経験無さすぎて、分からない……

自分のものを取られるみたいで嫌だ、って感じ?それとも、もっと複雑なのかな。

あー分からない!とりあえずは嫌な気持ちってことでまとめとこう。

「明日から夏休みだね!寂しくなるけど頑張ってね!」

愛美のその応援で、しばらくは頑張れる、と思う私だった。







「もっと、嫉妬の気持ちを表現できるかな?」

「あ、すみません……ところで、あのぉ……」

結局みんなの前で、具体的な嫉妬という気持ちを教えてもらった。

……意外と簡単で複雑な気持ちなんだと、私は一人学んだ。ただ、美記には笑われてしまったのだけど。

演技とは、台本をそれっぽく読むんじゃない。台本や原作以上の感情を込めてこそが演技なんだと私は思う。

私にはなかなか理解し難い感情ではあるけど、ここは腕の見せ所だ。