「あ、夏葉っ!一時間もどこに行ってたのよ?心配したんだからっ」

そう言いながら私に抱きついたのは、友達の愛美だった。

私は結局、屋上でずっと海を見ていた。たまに晴沢さんと言葉を交わす時もあったけどね。

またサボっていても良いかなと思ったけど、元々は彼の居場所だったから私は戻ってきた。

「ちょっとサボってただけだよ。心配かけてごめんね」

「それよりさ、早く佐藤さんと会ってきてあげて?あの人、夏葉が教室に戻って来ないことにすごく心配してた。黒板なんて全然見てなくて、廊下を見てみたり外の方見てみたりしてたんだよ?」

……え、美記が?私を心配していた?

「授業終わりのチャイムと同時に、教室から勢いよく飛び出しちゃってさ。挙句夏葉とすれ違うくらい必死そうだった」

なんか、悪いことをしてしまった気分……と思っていたら、誰かが勢いよく教室に入ってきた。

それは私たちが話していた人物、美紀だった。噂をすればって本当なのかもしれないな。

私の姿を捉えた美記は、早歩きで私たちの元へやって来た。……今はギャル達はいないようで少し安心した。

「はぁ…はぁ、っねぇ、どこに行ってたの?人に心配かけないでよ」

「愛美にも言ったけど、ただサボってただけだよ。ギャル達とは気まずいし?」

「せめてサボることくらい言ってからサボってよ。俺、どうにかなりそうだった……」

あっそ。…でも、原因は美記じゃん。美記のせいで自分自身が心配する羽目になったんじゃないの?

てか、心配されなくても生きてるし元気なんだけど。

「私、ちょっと道琉のところ行ってくるね♪」

……なぜか愛美は私たちを二人きりにして行った。そんなことをしても気まずいだけなのに。

「あれ?夏葉、どこ行ってたの?微かに海の匂いと混じって香水の匂いもする。…誰かと会った?」

全く、無駄にこの人は鋭いんだから。……嘘って、真実を混ぜるとバレにくくなるらしいよ?

「保健室に行ったら先輩がいたの。香水の匂いはそれが原因だと思う。海の匂いは、空き教室の窓全開にしてたからじゃないかな」

空き教室なんてもちろん嘘だ。先輩の香水ってのも嘘。心当たりは、晴沢さんといた時間だ。

だけど、屋上だなんて正直に言ったら晴沢さんに迷惑だ。

それに、私のサボる場所でありお気に入りの場所に行けなくなるかもしれない。

だから、私は嘘をついた。先輩と会ったのは本当のことだから、全部が全部嘘じゃない。