翌日、イケメンが転校してきたとか何とかって言って女子が殺到した。

無理もないとは思うけど、正直言って邪魔だ。

通行の邪魔をしているの、あなた達は分かってますか?

…私の顔に出ていたのか、佐藤さんは女子達に「通行の邪魔になってるよ」と言ってくれた。

優しいとこも備えているとか、他の男子達の居場所がなくなりそうだ。

彼にありがとうと言って席に着く。

そこで気がついたんだけど、彼の机の中にはある物が入っていた。

「…これって、チョコレート?しかも、ラブレターらしきものまで入ってる」

「そうなんだ。これは流石に困るんだよね」

「わっ!びっくりした…」

さっきまで女子と話していたはずなのに、気づいたら私の隣まで来ていた。

しかも、私の独り言まで聞こえていたと言う事だ。…なんか恥ずかしい。

「驚かせてごめん。でも、流石にこれはないよね?」

佐藤さんは少しボリュームを下げて私の耳元で囁いてきた。

これは狙っているのか、それとも素なのか。私は試されているのだろうか。

「…あれ?覚えていない感じ?……まぁ、いっか」

覚えていない?何が?なんて聞けなくて、その後もしばらくモヤモヤしていた。



 ここで問題が起きた。

プリントはほとんど横列で配るため、左横隣りの彼が私にプリントを渡す時に目があってしまうのだ。

「どうぞ」って渡してくる度に、「ありがとう」って言わなくちゃいけないのが地味に辛い。

何がって、もちろん女子からの視線。羨ましそうにこちらを見てくる。

席替えの時も、「えー、夏葉さんいいなぁ!代わって?」なんてあざとく言ってきた子がいた。

別に、私としては良かったけど先生が「ダメだ」って言ったから、視線から逃れられる事はしばらくなさそうだ。

でも、その視線もほとんど全部が佐藤さんに向けられたものなんだけど。

そんな佐藤さんは、何も気にしていないように女子の相手をしている。

顔面偏差値が高いのも、色々と大変そうだなと思う。



「なーつーはー!今日もお昼一緒に食べよう?」

「うん!もちろん」

そんな日々にやや疲れ気味の私は、こうやって愛美と過ごす時間が癒しだった。

きっと、他の女子は佐藤さんを眺める事で癒されてでもいるんだろうな。

「夏葉?なんか、険しい顔してるよ?ダメダメ。女の子には笑顔が一番似合うんだよ!」

優しい彼女は私のほっぺたをムニっとつまんだ。

「あい、すひはせん」

ちゃんと言えていなかったであろう謝罪を聞いた愛美は、「なんかあった?」と気にかけてくれた。

「何でもないんだけどね。ただ、女子って身勝手で恐ろしいな〜って最近は特に思ってるだけ」

「うん、確かにそれは思う。でも、無理もないかなー?だって、あのルックスじゃん?女子は食いつくよ」