美記にこの気持ちに応えてもらえなかったから?

それとも、やや尖ったような口調で言われてギャル達と同じような扱いをされてしまったから?

わからない。でも、心がチクチクする。

そんな私を、何かが包み込んだ。わ、暖かいと思ったのも束の間、私は気付く。

……美記に抱きしめられていた。

「なななななっ?!ちょっと…」

「ごめん。俺、夏葉の気持ちを考えてなかった。言い方、もう少し考えないとな……」

そう言って美記は、私から離れて今度は手を握った。そんな彼は、どこか悲しそうで寂しそうだった。

人通りが多い廊下に出る前に、私たちはどちらからともなく手を離す。

そのまま何も話すことなく、教室まで戻った。

「あ、夏葉!もうすぐ授業始まるけど、どこに行ってたの?」

「あぁ、ちょっとだけ校内散歩…してただけだよ」

教室に入ってすぐに、愛美が駆け寄ってきた。……何とか誤魔化すことは出来たかな?

ちらっと教室を見渡すと、そこには気まずそうな顔をしたギャルが数名いらっしゃった。

…さっきのギャル達の中にいた人達だ。それに、今、教室には美記もいる。はぁ、これからどうしたら良いものか。


 そんな時、チャイムが鳴って授業が始まった。隣にいる美記をちらっと見てみれば、机に突っ伏していた。

このままじゃ先生に怒られるかもしれないと思って、私は彼の肩をシャーペンでつついた。

美記はムクリと起き上がると、私の方を見てニコッと笑った。

……え?もしかしてわざと?ムッカァ!私は心配してあげたのに!

少し睨んでやると、美記は少し眉を下げた。

「おい、そこの二人!何コソコソしてる」

わ、先生に注意されちゃった!もう、後でぐちぐち言ってやる…!その前に先生の誤解を何とかしなきゃ。

「…っえ?!コソコソなんてしてないですけど?隣の人が寝ていたから起こしただけです!」

「おい、寝ていたのか佐藤」

「あ、完全には寝てなかったですけどウトウトはしちゃってました。…すんません」

「ったく、次からは気をつけろよ?」

「…はーい」

…ザマァみろ!私をからかったからしょうがないよね♪

美記はとても嫌そうな、怒ってそうな顔をしていた。ウゲェ、これはこれでめんどくさくなりそう。

案の定、授業終わりに美記が私に向かってこう言った。

「夏葉って性格結構悪いよね。さっきまではお互いに少し気まずかったのに」