……これは、私の回答次第では?ギャル達に睨まれるか、佐藤さんに顔をしかめられるか。

私だったら、リスクが少ない方を選ぶ。答えは、

「うん。そうだよ?さっきはね、ノリで叩かれかけてただけだよ。この人達、良い人だよ」

「……」

「だから、その手を離して?」

私の言葉に納得できてなさそうだったけど、佐藤さんは渋々でも手を離してくれた。

…心から安心した。これでしばらくは大丈夫かな?

「……もしもノリだったとしても、夏葉に手を出したら次は許さないから。夏葉が優しくてヨカッタネ」

そう言って佐藤さんは、私の手を引いてここから立ち去った。

はぁ、私の努力はすぐに泡になる。ギャル達の前で手を繋いじゃったら、余計に牙を向けられるって!


「ちょ、ちょっとどこに行くの?」

佐藤さんは何も反応してくれない。これは、やっぱ怒ってる?

手を繋いだまま、渡り廊下を渡り、人通りの少ない階段まで辿り着いた。

「…ここに座って」

そう言って彼が指で示したのは、屋上でに繋がる階段の一番上だった。

私は言われた通りに、そこに腰を下ろした。

「ねぇ、何なの?」

何なのって言われても、何がですか?

「夏葉さん、ギャルを庇ったでしょ?自分が痛い思いしても、何でそこまで…」

あはは、バレちゃってたかぁ。さすが、鋭い観察眼だ。もう、取り繕う必要はないかな。

「リスクを考えただけだよ。別に、庇いたくて庇ったわけじゃないし……」

「ねぇ、その頬大丈夫?」

その言葉と同時に、佐藤さんの手が伸びてきて私の頬に触れた。

「……痛くない?」

「う、うん。痛くはないよ?」

かぁぁと、頬がさらに赤くなった気がする。きゅ、急に触れられたら、不覚にもドキドキしちゃうじゃん!

あぁもう!佐藤さんが立っている段が一つ低いのも、彼がしゃがんだ時に目線が同じ高さになって、余計にドキッとする。

「俺が、夏葉さんを守るから。あんな奴らに指一本も触れさせないから。だから、俺のそばにいて欲しい」

わわわわわ、な、何告白的なことしてくれちゃってんの?!これ以上は心臓がもたない…

「あと、俺のこと、いい加減に佐藤さん呼びするのやめてほしい。下の名前で呼んでよ夏葉」

あ、まただ。なぜか、彼に夏葉って呼ばれると懐かしくなる。嬉しくなる。でも、少し恥ずかしいな。