「はぁ、素敵……」

思わず溜息をもらした私に悠悟さんが眉をしかめた。

「また攻略したのか」

彼と付き合って半年が経った。

私は相変わらず乙女ゲームが大好きだった。

最近ハマっているのはアイドルグループメンバーがキャラクターのものだった。

こうして悠悟さんの家にいて一緒に過ごしていてもゲームをする時間を提供してくれる彼はやっぱり大人で寛容だ。

とは言ってもゲームの時間は夜九時まで。
それからはふたりで過ごす時間と決まっていた。

今夜は夜景を見ながら二人でお酒を飲むことにしていた。

おつまみは私が作ったクリームチーズとサーモンのカナッペだ。

「残っている攻略キャラはあと何人なんだ?」
「ふたりです」
「もうふたりか。ずいぶんと攻略が早いな。男を落とす手段が磨かれてきたか」

いじわるな言葉に私は笑い返した。

「そうね。最高のイケメンに愛されたので、そこには自信があるかも」
「へぇ。言っておくが俺はまだ攻略されつくしてないぞ。コンプリートはハッピーエンドを迎えたらだろ?」

私は不可解に思って首を傾げた。

「私、もう十分ハッピーですけれども?」
「そうか。それは嬉しいが、俺はまだ欲深いんだ」

言うなり悠悟さんは小箱を差し出した。

中には眩い輝きを放つダイヤをあしらった指輪が入っていた。

驚く私に彼は跪くと指輪を差し出した。

「君が好きそうなプロポーズの言葉をいろいろ考えたんだが、いざ本番を迎えると緊張するな。気障過ぎるセリフを言って笑われないといいんだが」

悠悟さんの微笑に励まされ、私は泣きそうになるのを堪えた。

どんなに素敵なお話を見届けてもけして現実では縁のないと思っていた最高のハッピーエンドを、私は今まさに迎えようとしていた。

私はかぶりを振ると微笑んだ。

「もしその機会を神様に与えてもらったら、その時に相手の方からもらう言葉は一番シンプルなものがいいと思っていました」
「そうか、なら安心だ」

悠悟さんは愛に満ちた目で真っ直ぐに私を見つめた。

「美香、どうか俺と結婚してください」
「はい、喜んで!」

最高のハッピーエンドを手に入れた私に、永遠の誓いのキスが降り注いだ。