「ありがとうございます。ではご確認よろしくお願いいたします。あと、昼食はいつものを注文いたしましたがよろしかったでしょうか?」
「かまわない。食べながら資料を確認するから、君も休憩に入るといい」
「はい。失礼いたします」

 今日もベルト様に褒められちゃったぁ~! と心の中で喜びを噛み締めつつ、私は社長に毅然と挨拶をして社長室を出た。

 昼食はいつものカフェに行こうと歩いていると、書類を見つめたまま立ち止まっている男性の姿が目に入った。先ほどのチームリーダーだった。
 背中に元気が感じられない。やはり企画書が通らなかったことがこたえたようだ。

「大丈夫ですか?」

 心配に思って私がそっと話しかけると、チームリーダーは「ええ」とうなずいた。

「社長が厳しいのはそれだけ企画に期待を寄せているからだと思いますよ」
「はい。自分も社長のそういうところに憧れているので、頑張ってついて行きます」

 という言葉からは無理をしている様子は感じられない。
 つい声をかけてしまったけれども、いらないお世話だったようだ。

 私はここに秘書として入社して半年しか経っていないけれども、彼のようにバイタリティある社員を見かけることが多くあった。
 それだけこの会社が熱意と活気に溢れたいい会社だという証だ。やっぱり社長の仕事ぶりと魅力が良い影響を与えているのだろう。

「無理はなさらず、ほどほどの息抜きをしながら頑張ってくださいね」

私なら今夜はベルト様主役のドラマCDをエンドレスリピートして徹底的に癒してもらう――けどそんなことはチームリーダーには口が裂けても言えない。

けれども彼はすっかり切り替えができたようだった。

「綿貫さんに励まされて元気が出ました! ありがとうございました」

と言葉を残してしっかりとした足取りでオフィスに戻って行った。