あの夜以来、俺は彼女をますます手離せなくなってしまった。

大好きな二次元のことを話す時は無邪気でかわいいのに、抱くと淫らに俺に縋りついてきてたまらなく扇情的な姿を見せる美香。

彼女と一日だって離れていたくない。

それほどまでに彼女に夢中になってしまったのに、俺と彼女の心の距離は相変わらず遠いままだ。

「社長、いかがされましたか?」

スマホを見つめて物思いにふけっていたら、美香が怪訝な顔をした。

「いや、ベルトとの絆が深まっていて新しいストーリーが始まったので見ていただけだ」
「え、本当ですか?」

嬉々として美香が近付いてきて俺のスマホを覗き込んだ。

「すごい、このルートに入ったんですね! これからの展開は面白いですよ。敵国が攻めてきてですね……」

夢中で話し始めた美香の笑顔に見入るものの、心は重い。

ゲームを話題にしなくても、こうやって俺に打ち解けて欲しいのに――。

気づけば俺は美香にキスしていた。

昼間にしたのは初めてだ。仕事中に私情は出さないと決めていたのに、ほとんど無意識に口付けていた。