彼女が部屋で「行かないで」と言ったのは俺に対してではないことはわかっていた。

けれども自分の欲望を抑えることができなかった。
別れた男のことなど忘れさせるくらい深く彼女を愛したかった。

一度たがが外れてしまったら抑制はきかなかった。
何が何でも彼女を俺のものにしたくて、つい関係を強要してしまった。

その後、彼女の失恋相手は実はゲームのキャラクターだとわかり安堵した。

沈着冷静な彼女がまさか二次元のキャラクターに夢中になっていたなんて、と彼女の本当の姿を知って嬉しく思った。

だがそれは最初の内だけだった。

彼女がまったく俺を見ようとせず、推しキャラに夢中で俺のことなど眼中にない様子だからだ。

体だけの関係を強要してしまったのだから良い印象を持たれていないことはわかっている。

だから初めて俺の部屋に招いた時は、今夜は抱かないと伝え、彼女と打ち解けるために心を砕いた。

ベルトのことを話してくれた時の彼女の屈託のない笑顔はたまらなく愛しいと思い、さらに惹かれていった。

その反面、歯痒くも感じた。あろうことか俺は彼女をそこまで幸せにするベルトというキャラクターに嫉妬心を覚えてしまった。

だから彼女が俺といる時間よりゲームのイベントを優先しようとした時、つい独占欲が暴走してしまったのだ。